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公正な採用選考を目指して

年度の切り替わりの時期となり、採用選考の機会が増加していくものと思います。

雇用主には、採用方針や採用基準、採否の決定など、「採用の自由」が認められているところですが、憲法によって保障されている応募者の基本的人権を侵害してならないのは当然のことです。
「つい」「うっかり」応募者の基本的人権を侵害してしまうことのないよう、ここでは採用選考の際に留意すべき事項について説明をしていきたいと思います。

公正な採用選考のためには、以下のふたつのポイントが重要となります。

《応募者に広く門戸を開く》

国籍や出身地、難病を患っている方やLGBT等の性的マイノリティなど、特定の人を除外せず、求人条件に合致するすべての人が応募できるようにしてください。
性別や年齢、また、障害者であることなどを理由に選考から除くことは、法律でも禁じられています。

《応募者の適正・能力のみを基準にして選考する》

「その仕事をしていくのに必要な適正や能力を持っているか」ということ以外を選考基準としてはいけません。
「本人に責任のない事項」や「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」を採用の基準としないようにしてください。

実際に選考をする際に、具体的に配慮すべき事項は主に以下の14の事項となります。ここに挙げられていないものであっても、応募者の基本的人権を侵害するような事項の把握、質問等は認められませんので、ご注意ください。

「本人に責任のない事項の把握」
① 本籍・出生地
② 家族
③ 住宅状況
④ 生活環境・家庭環境
「本来自由であるべき事項の質問(思想・信条にかかわること)」
⑤ 宗教
⑥ 支持政党
⑦ 人生観・生活信条
⑧ 尊敬する人物
⑨ 思想
⑩ 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動
⑪ 購読新聞・雑誌・愛読書
「不適切な選考方法」
⑫ 身元調査の実施
⑬ 全国高等学校統一応募用紙・JIS規格に基づかない事項を含んだ応募書類(社用紙)の使用
⑭ 合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施

もちろん、ほとんどの事業所では、応募者の基本的人権を侵害するつもりなどないものと思われますが、去年までと同じ選考方法を取ったことで、結果として不適切な選考となってしまったというケースがあります。
具体的には、応募書類(社用紙)に本籍地や愛読書、尊敬する人物を記載する欄があり、慣例的に使用していた、というようなものです。
令和2年7月にJIS規格の履歴書の様式例が廃止されるなど、これまで問題ないと思われていた内容が、変更となることもあります。
これを機に、採用選考の方法について、見直しを行っていただければと思います。

公正な採用選考を行うことは、応募者の基本的な人権の尊重のためばかりではなく、事業所に対して必要な人材を確保する観点からも、非常に重要なことと考えられます。

また、採用選考のためではなく、場を和ませるためや話の接ぎ穂として、家族や趣味などについて話題にした、というケースも数多く見られるところです。
話題とした事業所側は単なる雑談であり、実際の選考の基準としないつもりであったとしても、訊ねられた応募者は、答えた内容が選考結果に反映されたのではと考えてしまいます。

最近は、選挙権が18歳以上に引き下げられたことを受け、高校生を面接した際に、選挙の投票を行ったかどうかを訊ねたような件もありました。選挙権が引き下げられたことに関係するところでは、本人の社会に対する意識の高さを確認するためと思われますが、「高校生が有権者として政治活動に参加することについて、どう思うか」、というような質問を行った事業所がありました。
これも、思想・信条に関することとなり、不適切な質問となります。
タイムリーな話題は質問に盛り込みたくなりますが、その内容が適切かどうか、確認をお願いいたします。

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厚生労働省で作成しているリーフレットに上記のことがまとめられておりますので、ご参照ください。また、リーフレットの最終ページには、簡単なチェックリストが掲載されています。自社の採用選考について、見直しをしてみてください。

最後になりますが、事業所の方から、健康診断の実施について質問を受けることが多くあります。
健康診断については、雇入時に実施することが法律に規定されていますが、これは採用選考のためではなく、採用後の適正配置や健康管理を目的とするものです。
採用選考時における健康診断は、募集を行っている業種・職種に対する適性と能力を判断するために、合理的かつ客観的に必要である場合に限り、実施することが可能です。
健康診断を実施する場合は、その必要性を応募者に対して説明をし、本人の同意を得るようにしてください。また、その内容については、業務に関係のないことが含まれないよう、充分に注意するようにしてください。

詳細については、厚生労働省のウェブサイトに掲載されていますので、ご確認ください。
また、そのサイトに「公正な採用選考をめざして」というパンフレットが掲載されており、より詳細な説明が記載されておりますので、是非お手に取って今後の採用選考にお役立ていただければと思います。

関連サイト

厚生労働省 公正な採用選考について

事業主・採用選考担当者・求職者のみなさまへ「公正な採用選考を目指して」

厚生労働省 「公正採用選考」の解説動画公開中!

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