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REAL VOICE #1 人に寄り添う外国人総合窓口を目指して|市民課 佐藤ローザさん(会計年度任用職員)

 常総市では、地域の持つ可能性を発見し、従来の枠にとらわれない発想でそれらを強力に活かしていく地方創生時代の職員・組織を創ることを目的に、「地域経営をリードするための人材マネジメント部会2023」へ3名の職員が参加しています。この令和5年度人材マネジメント研究会では「10年後の持続可能な地域づくり」をテーマに研究を進めています。様々な視点から常総市の置かれる立ち位置や進むべき道を導き出すためにどうすべきか議論を重ねています。

インタビューによる研究の様子

 この度私たち参加メンバーは、市の最上位計画である「じょうそう未来創生プラン」に基づき、各分野の最前線で活躍される方にスポットを当て当事者の思いを研究に活かすことといたしました。なお、趣旨をご理解いただき職員や市民の皆様に広く知ってもらうべきであるという考えのもと公開をさせていただくことにしました。ご協力いただきました関係者の皆様には改めて御礼申し上げます。

さて第1回のインタビューは市民課で通訳として活躍されている会計年度任用職員の佐藤ローザさんに話を伺いました。
(聞き手:谷田部久子/商工観光課、平塚雅人/デジタル推進課、松永寛人/常創戦略課  写真:平塚雅人 ※一部提供写真あり)

偶然をきっかけに通訳の世界へ

市民課通訳担当 佐藤ローザさん

「もともとこの辺りに住んでおり会社勤めをしていました。2011年の震災で帰国する選択肢もありましたが、たまたま、その時に健康診断で通訳をやってくれないかと誘いがあったんです。」

ローザさんは、通訳の仕事に以前から興味があったと言います。

「実はそこの社長が常総市役所の職員のお友達で(笑) 常総市で通訳の仕事をやらないかと紹介がありました。最初、日本の市役所は大変そうで働くことが出来るのか不安でした。でもその時に面接してくれた方々がとても親切だったんです。」

このきっかけからローザさんは常総市役所で働くことになりました。

「はじめは”市民協働課”、それから”市民と共に考える課”、そして今の”市民課”に異動しました。当初は戸惑うことも多かったです。特に市役所の専門用語、制度、各課の業務内容などの把握に苦労しましたね。でも周りの職員もサポートしてくれ、良いサービスを提供出来るように努めました。 今まで特に印象に残っているのは “がんぱっぺ!常総フェスティバル2018”、泉谷しげるさんのライブ、アート展の時の“イペー祭り“ですね。特に”イペー祭り“の際にはブラジル総領事もお見えになられました。神達市長はもちろん、初めてこんな偉い方々の通訳をしました。ドキドキしながらでしたが、こういう立場の方の通訳を経験し、通訳の面白さに気づきましたね。」

通訳業務にあたるローザさん(写真右から2番目)

 仕事以外の繋がりも増えていき、常総市に住んでいる外国籍の方が言葉や文化、制度の壁など様々な苦労していることに気づいたローザさん。より分かりやすく伝えることが大切だと思い、様々な自治体のHPをみて勉強したり、どう説明すれば伝わるかを研究したりしてノウハウを積み上げて行ったそうです。

「コロナ禍前は日本に来る方、外国籍の方が毎年多くいましたが、コロナ禍で制限が掛かって来日するビザの取得が難しくなりました。ビザ資格制度も変わって来ており、最近は日系以外の方、様々な外国籍の方も日本で働いて生活しています。1990年代は日本も景気が良かったから出稼ぎに来た方々が多かったですよね。その時20歳前後で移住した方も今や50代。ブラジル人の年配の方は帰国される方ももちろんいますが、日本で永住を選ぶ人も多いですよ。ただ、今後はブラジルより東南アジア系の移住者が増えていくでしょうね。」

人に寄り添い、先を見据えた案内を心がける

「常総市に住む外国人にとって問題はまだまだたくさんあります。教育でいえば不登校児。日本で生活するのなら日本でしっかりと教育を受けてほしい。」

一人で生活できる力をいかに養うかが重要だとローザさんは語ります。そしてそこを私たち市役所がどう繋いでいくかが課題でもあります。特にブラジルと日本では学校のシステムに違いが多く、入学の手続き、制服、学校の掃除など、多くの点で戸惑うことが多いそうです。ブラジル国籍以外の方も増えた今、外国籍の方の多くが制度の違いに苦労されているようです。

「私も自分のこどもを幼稚園に入れる際、入園をさせる方法を理解していなかった。あの時は急遽何とか入園させてもらいましたけど。そんな経験からも親への理解を促すのが重要だと思っています。あとは制服などの購入といった金銭面の負担に困っている人も多い。それは日本の学校の制度がわからない、理解していないからおきるトラブルですよね。」

だからこそ最初にルールを周知することが非常に大切だとローザさんは感じているそうです。

「引っ越してきて最初に来るのは市役所。ゴミや税金など制度をただ訳して伝えるだけではなく、とにかく分かりやすく人に寄り添って先を見据えた案内を心がけています。みなさん分かりやすく説明すれば応えてくれますから。」

外国人も日本人も暮らしやすい常総市を目指して

「外国人の方は、単なる労働者ではなく、常総市民として生活していますよね。常総市は住民の10%が外国人ということで注目を集めていますが、困り事はまだまだたくさんあります。私たち市役所の職員も、地域に住む日本人もみんなで協力をして誰もが住みやすくて暮らしやすい常総市を目指していきたいですね。そうすれば国籍関係なく自然に繋がりが出来るので。市民へのお知らせや、防災、特に避難情報のような重要な情報の場合は市民同士の口コミも大切だし、SNSなどで一斉にお知らせを出来ればよりよい行動が取れて危険を避けることも出来るのではないかと思いますね。」

言葉の壁がある方に対してもスピーディーに情報が伝えられる仕組みが必要だとローザさんは感じています。

「残念ながら外人と呼ぶ方も未だに多く、まだまだ住民として認められていないのではないかと思うこともあります。在住外国人の中にも生活保護を受けている方はいますし、今後高齢化も進んでいきます。みんな困ったときに来るのが市役所なんです。話を聞いてあげるだけでもほっとされる方も多くいます。みなさん同じような標準的な暮らしをしたいと願っています。そのための支援を今後もしていきたいですね。」

また、日本に住む外国人の方はまだまだ職業の選択肢が限られていると感じているそう。

「子どものころから持っている夢、ポテンシャルを実現出来るような取り組みが必要だと思いますし、人に寄り添って対応していきたい」とローザさんは語ります。

今後の想いについて

外国人総合窓口にはさまざまな言語に対応できるよう翻訳ソフト等も備えられています

「常総市には畑が多くありますが、在日ブラジル人の中にも畑で野菜を育てたいという声があるんです。そういう方たちが休耕地に野菜を育てられないかと考えています。例えば常総市に住む外国人の方や高齢者など様々な方が野菜を育て、お金を稼いで、健康にも繋がる。交流も出来るしその外国人の方が日本であまり見ない珍しい野菜を育てれば常総市の名物にもなりますよね。外国人の方が住民として常総市で活発に生活する姿を実現したい。」 

ローザさんの想いは、外国人総合窓口の通訳担当にとどまりません。

(編集後記)ローザさんのインタビューを振り返って
茨城県において人口に占める外国人住民の割合が一番高い自治体であることは周知の事実ですが、その最前線で業務をされる佐藤ローザさんの言葉からは、ハッとさせられるキーワードが多くありました。多文化共生やダイバーシティと口で言うのは簡単ですが乗り越えるべきハードルはまだまだ高いといった印象です。ただ大切なのは「いかに人の気持ちに寄り添うことができるか」ということではないでしょうか。この想いに国籍や人種は関係ないでしょう。技術が進みスマートフォンなどで翻訳自体は簡単にできるようになりました。しかし私たちは機械が汲み取れない人の想いをどこまで汲み取ることができるか…市役所職員としてのあり方を問われているような気がしました。なお現在、常総市では通訳に従事する職員が3名在籍しています。今回は佐藤ローザさんにインタビューを受けていただきましたが、通訳の方ならではの思いを多くの方にも知っていただければと願っております。

令和5年度人材マネジメント研究会参加メンバーでは、今後も「10年後の持続可能な地域づくり」をテーマに様々な方へインタビューを行ってまいります。


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