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REAL VOICE#4 日常的に“ふれあえる”鉄道を目指したい|関東鉄道株式会社 水海道駅管区駅長 中島義則さん

鉄道が生活の一部だった幼少期

水海道駅管区駅長の中島義則さん

―中島管区駅長が関東鉄道で働き始めたきっかけはありますか?
 実は私の実家が水海道駅のすぐ近くで、父親が常総線の運転士をしていたんです。小さいころから列車を見ていますから、鉄道は私にとって生活の一部でした。幼稚園に通う頃から将来は運転士になりたいと思っていました。また、学校に通う年齢になれば、父親が運転する列車が分かるわけです。そうすると「なんかやっぱりいいなぁ」と思うわけです。父がいたことで普通の人以上に鉄道は身近にありました。あとは、やはり地元で働きたいという思いが強かったこともきっかけになりました。
 
―これまでどのような業務を担当されましたか?
 私は高校を卒業して、18歳で就職しました。2年間は駅で下積みのような補助的業務を経験しました。最初は戸頭駅に配属され、社会人としてのイロハを学び、8か月後にここ水海道駅に配置転換となりました。水海道駅へ異動となったときは嬉しかったですね。地元の駅に戻ってきたということで、当時は毎日がワクワクしていた記憶があります。
 
―地元の駅に配属されてワクワクするって良いですね。
 この年、運転士免許を取るために講習を受けることになりました。以前は、駅の南側に水海道機関区と呼ばれる車両基地があったんです。免許を取るために水海道機関区に異動し、平成2年の8月に免許を取得して念願の運転士になりました。それからは運転士として乗務したり、車掌をしたりしました。そこから20年間乗務員をやっていましたね。その後、守谷駅などの助役を経て、新守谷駅で駅長になりました。駅長でしたが窓口から掃除まで業務全般をこなしていましたね。
 
―駅長の仕事って多岐にわたりますよね。
 その頃は駅長でありながら窓口にも入っていましたね。掃除なども含めて業務全般をやります。その後は下妻駅に異動し、同じように窓口に入ったりしていました。その後、管区駅長として水海道駅に異動になりました。この駅では水海道管区ということで小絹駅から下館駅までを管理をしています。
 
―管区駅長ならではの仕事はありますか?
 管区内にも駅長がいる駅もあって、基本的には各駅の駅長に任せています。教育など管区単位で行っていることもありますので管区駅長として直接現地へ行ったり、水海道駅へ来てもらい指導を行うこともありますね。

コロナ禍を経て鉄道環境も変化

取材の様子

―新型コロナウイルスで鉄道各社苦戦を強いられましたが、現在の状況はどうでしょうか?
 利用者が減少し,厳しい状況でしたが、現在は徐々に戻ってきています。それでもコロナ前の状況には届いていないですね。
コロナ禍の間は全体的に利用が落ち込みましたが、現在では、通学需要はかなり回復しました。一方で通勤需要についてはリモートワークの定着もあり、まだ回復しきっていないですね。
 
―徐々に回復傾向なんですね。10年後の常総市の姿に向けてどのような想いがありますか?
 常総線は今年開業110周年を迎えました。鉄道は沿線のお客様の利用があってこそですから、今後の10年に向けて「地域のお客様の利用促進」と「地域との連携強化」が非常に重要だと思っています。道の駅常総もオープンしましたし、IC周辺の企業誘致など常総市の沿線開発も進んでいますので、連携を強化して常総線が走る未来につなげていくことが重要だと思います。弊社としてはイベント列車やコラボイベント、地元で行われる催事協力など沿線の皆様と一体になって盛り上げられるように考えているところです。
 
―現状、市内では車通勤者が多いですが、どのように利用促進をしますか。
 茨城県はどうしても車社会でありますから、それは致し方ない部分もあります。1回2回乗っていただいたお客様がまた常総線に乗りたいなと思えるような魅力を私たちが構築したいと思っています。例えば、水海道駅から下館駅の間に多い簡易改札機は都内から来た方には馴染みが無いですよね。工夫として、使い方の案内板を私の方で作ってみました。小さなことかもしれませんが、気軽に利用してもらいたいと思っています。5年後10年後に振り返ったときに、今よりも利用者が増えてくれれば良いのかなと思いますね。
 
―車通勤が多い現状ですが、休みの日などに鉄道で訪れるなど、まず非日常の使い方をどんどん促進できるといいですよね。
 そのように考えてもらえるのはありがたいです。東京に行く場合、TX(つくばエクスプレス)開業前は、取手で乗り換え、上野まで1時間半でした。今は守谷で乗り換えれば秋葉原まで1時間で行けます。その分、関東鉄道としては守谷~取手間の運賃収入が減ります。それでもやはり一人でも多くのお客様に乗っていただきたいと思っています。
 
―コロナ禍を経ての大きな変化はありますか?
 今の段階ではコロナ禍の状況から完全に回復した訳ではないです。30年前私が入社した時と一番変わったのは「飲んで帰ってくる人が少なくなった」ことです。係員の頃は泥酔されたお客様の応対を1日何回もしましたが、最近は本当に少なくなりました。また、車内に残されている新聞や雑誌が依然と比べて減りました。そういった意味で紙媒体からデジタル媒体に転換しているのを目の当たりにしますし、それが町の本屋さんが減っていることなどを反映しているのだなと感じますね。
 
―デジタル化が進んで、お客様と接する機会は減りましたか?
 そうですよね。私が入った時と比べると今は機械でパッとできますからね。お客様と接するのが好きな係員には寂しさがあるかもしれません。改札で切符を切っていた時代はお客様の顔も覚えましたよね。この人はどこに座るとか、座って何をするというのまで大体把握できていました。自動改札になってしまうと、そういったことも見られなくなります。

面白い企画は現場から出てくる

―関東鉄道さんは市のイベントにもたくさんご協力いただいています。その中でお客様と触れあっていただいていますよね。
 そうですね。ビール列車のほか、日本酒列車、ワイン列車。あと夜行列車もやりましたね。
最初にやったときは本当に人集まるの?と心配しましたが、実際に蓋を開けたら、すぐいっぱいになっちゃって。
 
―素敵な企画ですよね。お弁当は沿線の飲食店のものを使ってすばらしい企画だなって。
 お弁当屋さんはたくさんありますが、やはり、地元のお店を使って、食べた方が「美味しかったね。じゃまた食べに行こうか」となる。そうすれば、そのお店の活性化にも繋がるし、やっぱりすべてにおいてみんなで手と手を組んでスクラム組んで盛り立てたいという想いです。
 
―面白い企画というのは、現場からも意見や企画を出せるものですか?
 イベント列車などについては、様々なアイデアが現場の係員から出てきます。そういったものを本社で検討してもらいます。ただ現場から上がってくるものは、突拍子もないものもありますね。
 
―すごいですね。現場から意見が出るための制度があるんですか?
 アイデア募集制度というものもありますけど、それとは別に現場の1人の声から、普段の会話の中から生まれたアイデアが大きくなっていくこともたくさんあります。それを持ち寄って会議で検討することもあります。鉄道好きな人が現場には多いですから、「この間どこどこで乗ってきたよ」とか「あそこでこんなことやっていたよ」なんてことがヒントになって、「ウチだったらこういうことできるよね」ということがありますよね。
 
―ここには現場のみなさんの「好き」が集まってるわけですね!
 だからこそみんなで色々な小さなアイデアとかそういったのが出てくるのかもしれませんね。

コミュニティバスが走る市内の交通に期待

―関東鉄道さんは市や常総MaaS※などへ取り組まれていますが、市役所に期待するところなど率直な意見はありますか?
鉄道というものを中心にハブ化して、鉄道を利用して水海道駅から出発してほしい想いがあります。市役所とは関係を密にして、いろんな策を出し合いながら構築できると良いですね。意見の中には突拍子のないこともあるとは思いますが、全てフラットに意見をぶつけ合えるような環境が大事なのかなと思います。私たちも鉄道員という「人」であれば、市役所も「人」であるわけですからやっぱり組織を超えた人と人の繋がりのぶつかり合いとか、そういったものって大事なのかなって思っています。私自身昔スポーツを結構やっていましたけど、その時の経験からもやっぱり人と人とでぶつかり合っていうのが大事かなって思いますね。

※MaaS: 地域住民や旅行者一人ひとりのトリップ単位での移動ニーズに対応して,複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス

―来年度から市内にコミュニティバスが走ります。期待感はいかがですか?
とても期待しています。鉄道で来た方へ行き先の案内をする時にタクシーか、レンタル自転車を使ってくださいというだけではなく、コミュニティバスがあって、ある程度時刻などを合わせられると良いですよね。そうしたら大いにPRしたいですね。やはり、この駅にいると「どこどこ行きたいんですけど何かないですか」という問い合わせは、結構な頻度であります。「タクシーしかないんです」とお答えするのは忍びないです。

―お客様の案内は多いと思いますが、研修は実施していますか?
10月16日から11月15日まで、「BMK(ベストマナー向上)推進運動※ 」秋の強調月間を実施しました。これは、お客様の接客や電話応対などについて、より力を入れる期間です。常日頃からゆっくり、はっきりと喋ることや口角上げることなど、職場目標を掲げて実施しています。ですが、一番大事なのは強調月間だからやるのではなく、毎日がBMKだと思ってやることだと考えています。「その期間だけやりましょうね」では、なかなかできるようにはならないですからね。過去の取組みを振り返ってダメなところは直していこうという取組みです。 

※お客様から常に信頼され、選ばれる企業グループとなることを目指し、お客様第一主義に基づくサービス向上に取り組み、『京成ブランドの確立・進化』を図ることを目的に、グループ一丸となり年間を通じて取り組んでいる運動。

京成電鉄(株)HPより

―毎朝、改札を通るとき駅員さんの「おはようございます」と大きな声の挨拶が印象的です。
お客様にご利用いただいてる訳ですから、感謝の気持ちですよね。これからお乗りいただくお客様に対しても、目的地まで、ちゃんと時間通り安全にお運び出しいたしますという決意です。

―ちなみに中島管区駅長の一番好きな常総市のスポットはどこですか?
個人的な話ですが一言主神社ですね。事あるごとに、何かあるとお参りしています。何かしらの試験であったり、何かの大会であったり。そういった節目節目の大きなチャンスを得るであろうときには必ずお参りしてきました。

―市内には明治・大正期の建物をはじめ歴史的な名所がたくさんあります。地域の資源を活用できたらよいですよね。
そうですね、駅からの案内が少ないかなと思います。いろいろなものがあっても、それを伝える手立てを整える必要はありますよね。これまでの歴史の中で、活躍した人などが多方面にいますから、それはもうちょっとアピールしてもいいのかなと。石下地区の長塚節も有名ですし平将門もそうだなと思います。

いま自分たちがやるべきことをしっかりとやる

―管区駅長ということで、組織づくりなどの観点で日々の業務において意識していることはありますか。
 職場にはさまざまな年代の社員がいます。時代が変われば、組織や指導方法も変わります。昭和の終わりや平成初期のやり方・考え方というのは今の時代にはそぐわない。時代に合わせた指導方法や、職場の雰囲気づくりを意識しています。その中で職種・年齢・年代問わず、気軽に「報告・連絡・相談」できるような職場環境の構築をするというのが今最も目指しているところです。
 
―管区駅長としてこれから10年間をどのように見据えていますか?
今の水海道駅管区駅長としての立場も変わるかもしれません。夢は大きく持てばいいのかもしれませんが、鉄道というものはご利用していただくお客様があってのものです。日々、安全第一かつ精一杯に取り組むことで、お客様に「また乗りたいな」、「継続して利用したいな」という思いを持っていただけるようにしたいです。これはもう、永遠のテーマですよね。自分たちが何をすべきかと考えると、やはり「安全第一」に限ります。あとは「定時運行」をすること。お客様に安心して乗っていただくほど、その積み重ねがお客様の期待に繋がっていきます。「いま自分たちがやるべきことをしっかりとやる」。これは10年後でも100年後でも一緒ではないでしょうか。
 
―最後に中島管区駅長が考える常総線の魅力をお伺いできますか?
 気軽に乗っていただきたいですね。今日何もやることないから常総線でも乗ってこようかなと言えるぐらいの魅力を構築していきたいですね。関東鉄道には「地域のふれあいパートナー」というキャッチフレーズがあります。みなさんの心の拠り所や、地域の止まり木のような存在で気軽に遊びに来てほしいです。いろいろな方が顔を合わせて、懐かしい昔話に花を咲かせたりなんて風景が気軽にあると良いなと。鉄道単体の魅力だけでなく地域と一体になって、地域を楽しむことと移動することの二つの要素が一体になればいいですね。空気みたいに自然な感じでね。

(編集後記)
いつも利用している駅の駅長さんとお話するのはとても新鮮な経験でした。駅長にも入社以来の経験や出会いがあり、その積み重ねが今や未来につながっていくことを感じるインタビューでした。常総市では、常総MaaSをはじめ,公共交通を基点とした取組を強化しています。関東鉄道さんのように、市役所でも「突拍子も無いアイデア」が出てくる対話環境ができると良いなと感じました。
(聞き手:谷田部久子/商工観光課、平塚雅人/デジタル推進課、松永寛人/常創戦略課  写真:平塚雅人)

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